【判例解説】共同相続人間における相続回復請求権の消滅時効の援用

【判例解説】共同相続人間における相続回復請求権の消滅時効の援用

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hは本件不動産を有していました。
Hの法定相続人はHの子AとBの2人でした。

昭和28年にHが死亡しました。H死亡後、Aは、Bの同意を得ずに、本件不動産につき相続を原因として単独名義の所有権移転登記を経由しました。

昭和38年、BはAを被告として、本件不動産につき、自己の共有持分(2分の1)に基づき上記所有権移転登記の抹消を請求しました。

これに対し、Aは、Bの請求は相続回復請求であり、Bが相続権の侵害を知ってから5年が経過したとして、民法884条の消滅時効を主張しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所大法廷
裁判年月日:昭和53年12月20日

本件の争点

共同相続人相互間に相続権侵害が生じた場合に、その侵害の排除を求める請求に関して民法884条が適用されるかが本件の争点です。

結論

最高裁は「共同相続人のうちの一人又は数人が、相続財産のうち自己の本来の相続持分をこえる部分について、当該部分についての他の共同相続人の相続権を否定し、その部分もまた自己の相続持分であると主張してこれを占有管理し、他の共同相続人の相続権を侵害している場合は、右の本来の相続持分をこえる部分に関する限り、共同相続人でない者が相続人であると主張して共同相続人の相続財産を占有管理してこれを侵害している場合と理論上なんら異なるところがない」こと等を理由として、共同相続人相互間に相続権侵害が生じている場合でも「民法884条の規定の適用をとくに否定すべき理由はない」と述べました。

もっとも、「当該財産について、自己に相続権がないことを知りながら、又はその者に相続権があると信ぜられるべき合理的事由があるわけでもないにもかかわらず、自ら相続人と称してこれを侵害している者は、自己の侵害行為を正当行為であるかのように糊塗するための口実として名を相続にかりているもの又はこれと同視されるべきものであるにすぎず、実質において一般の物権侵害者ないし不法行為者であって、いわば相続回復請求制度の埒外にある者にほかならず、その当然の帰結として相続回復請求権の消滅時効の援用を認められるべき者にはあたらないというべきである。」として、本件において、Aによる消滅時効の援用を認めませんでした。

相続問題のことならお任せくださいLeave the inheritance matters to us.

無料相談はこちら