【判例解説】典型的ではない共同遺言を全体として無効とした事例

【判例解説】典型的ではない共同遺言を全体として無効とした事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

H1(夫)は昭和43年7月10日に死亡し、H2(妻)は昭和51年7月8日に死亡しました。
両名の法定相続人は、A,B,Cでした。

H1とH2は自筆証書遺言を残していました(本件遺言)。

本件遺言は、全てH1が作成したものであり、「父H1母H2」との署名押印部分もH1が作成したものでした。

本件遺言の内容は、「甲不動産はAが相続する。乙不動産はBが相続する。ただし、遺産の相続は両親ともに死去した後に行うものとし、H1が死亡したときは、まずH2が全財産を相続する。」というものでした。

Cは、本件遺言は共同遺言禁止に違反して無効であるとして、遺言無効確認訴訟を提起しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判年月日:昭和56年9月11日

本件の争点

民法975条は「2人以上の者が同一の証書で」遺言をすることを禁止しています。

本件では、H1が単独で本件遺言を作成しており、H2の遺言としては、自書の要件(民法968条1項)を欠いているともいえるため、共同遺言として全体が無効となるのか、H2の遺言部分のみが無効となり、H1の遺言部分は有効となるのか、が問題となりました。

結論

最高裁は「同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方に氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法975条により禁止された共同遺言にあたるものと解するのが相当である。」と述べて、全体が無効になると判断しました。

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