【判例解説】受遺者を特定していない遺言

【判例解説】受遺者を特定していない遺言

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

遺言者Hの法定相続人は妹Bと妹Cのみでした。長年、HはB及びCと絶縁状態でした。

Hは、遠い親戚のC(法定相続人ではない)を遺言執行者に指定し、「遺産は全部公共に寄与する。」という内容の自筆証書遺言(本件遺言)を作成しました。

Hの死後、BとCは「公共」というのは範囲が広すぎて特定出来ないので本件遺言は無効であるとして提訴しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁第三小法廷
裁判年月日:平成5年1月19日

本件の争点

受遺者を特定していない遺言は無効と解すべきか、遺言執行者に受遺者を選定することを委ねたものとして有効と解すべきかが本件の争点です。

結論

最高裁は「遺言の解釈に当たっては、遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されるものというべきである。(中略)Hの置かれた状況からすると、同人としては、自らの遺産を上告人ら法定相続人に取得させず、これをすべて公益目的のために役立てたいという意思を有していたことが明らかである。(中略)本件遺言は、遺言執行者に指定した被上告人に右団体等の中から受遺者として特定のものを選定することを委ねる趣旨を含むものと解するのが相当である。このように解すれば、遺言者であるHの意思に沿うことになり、受遺者の特定にも欠けるところはない。」と述べて、遺言執行者に受遺者の選定を委ねた遺言書として有効と判断しました。

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