【判例解説】遺贈が後の協議離縁と抵触するものとして民法1023条2項の規定により取り消されたものと判断した事例

【判例解説】遺贈が後の協議離縁と抵触するものとして民法1023条2項の規定により取り消されたものと判断した事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

昭和48年12月22日、Hは扶養を受けることを前提に、A・B夫婦と養子縁組をし、A・Bと同居を開始しました。

昭和48年12月28日、Hは、不動産の大半をA・Bに遺贈する旨の公正証書遺言(本件遺言)を作成しました。

昭和49年10月、AがHに無断でH所有の不動産について、4億円の抵当権設定登記をしたことが発覚しました。

昭和50年8月26日、HはA・Bと協議離縁し、同居を解消しました。以後、A・BはHを扶養しませんでした。

昭和52年1月8日、Hが死亡しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判年月日:昭和56年11月13日

本件の争点

本件遺言は後の協議離縁によって取り消されたものとみなされるか。

結論

最高裁は、「民法1023条1項は、前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす旨定め、同条2項は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する旨定めているが、その法意は、遺言者がした生前処分に表示された遺言者の最終意思を重んずるにあることはいうまでもないから、同条2項にいう抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合にのみにとどまらず、諸般の事情により観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含するものと解するのが相当である。」とした上で、「右協議離縁は前に本件遺言によりされた遺贈と両立せしめない趣旨のもとにされたものというべきであり、したがって、本件遺贈は後の協議離縁と抵触するものとして前示民法の規定により取り消されたものとみなさざるをえない」と結論付けました。

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