【判例解説】預金の取引履歴の開示請求

【判例解説】預金の取引履歴の開示請求

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hは平成18年5月28日に死亡しました。

AはHの共同相続人の1人でした。

HはB信用金庫に普通預金口座と定期預金口座を有していました。

AはBに対して、上記各預金口座につき、Hの生前の一定期間についての取引経過の開示を求めましたが、Bは他の共同相続人全員の同意がないとして応じませんでした。

そこで、AはBに対し、H名義の預金口座における取引経過の開示を求めて訴えを提起しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第一小法廷
裁判年月日:平成21年1月22日

本件の争点

本件の争点は、
ⅰ)預金口座の取引経過開示請求権の可否
ⅱ)争点ⅰ)が肯定される場合における預金者の共同相続人の1人による取引経過開示請求権の単独行使の可否
の2点です。

結論

最高裁は、争点ⅰ)について、
「預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には、預金の返還だけでなく、振込入金の受入れ、各種料金の自動支払、利息の入金、定期預金の自動継続処理等、委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。)の性質を有するものも多く含まれている。委任契約や準委任契約においては、受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが(民法645条、656条)、これは、委任者にとって、委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに、受任者の事務処理の適切さについて判断するためには、受任者が適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり、預金口座の取引経過は、預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから、預金者にとって、その開示を受けることが、預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに、金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。したがって、金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。」と述べて肯定しました。

また、上記争点ⅱ)についても、
「そして、預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条、252条ただし書)というべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。」と述べて肯定しました。

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