【判例解説】遺言者の生存中に遺言無効確認訴訟を提起できるか

【判例解説】遺言者の生存中に遺言無効確認訴訟を提起できるか

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

Aは、Hの養子で、Hの唯一の相続人です。

Hは昭和63年頃より認知症の症状が現れていましたが、平成元年に公正証書遺言を作成しました(本件遺言)。
本件遺言の内容は、Hが所有する不動産の持分の100分の55をHの甥であるBに遺贈するというものでした。

その後、平成5年にHは禁治産宣告(現在の後見開始)の審判を受け、Bが後見人(現在の成年後見人)に選任されました。

Aは、本件遺言は、Hが意思能力を欠いた状態で作成されたものであると主張して、HとBを被告として、本件遺言無効確認訴訟を提起しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判年月日:平成11年6月11日

本件の争点

確認の利益は、原告の権利あるいは法的地位に不安が現に存在し、かつ、その不安を除去する方法として、原告被告間で当該訴訟物たる権利又は法律関係の存否の判決をすることが有効適切である場合に認められます。

本件では、遺言者であるHが生存していますので、このような場合にも、遺言無効確認訴訟の確認の利益が認められるかが問題となります。

結論

最高裁は「遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり(民法985条1項)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じない(同法994条1項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らかの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるに過ぎない。したがって、このような受遺者とされる者の地位は、確認の訴えの対象となる権利又は法律関係には該当しないというべきである。遺言者が心神喪失の状況にあって、回復する見込みがなく、遺言者により当該遺言の取消又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。」と述べて、確認の利益を認めませんでした。

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