先日(8月7日)、読売新聞社が米国の生成AI事業者を提訴したというニュースがありました。
読売新聞東京本社などが米国の「パープレキシティ」という生成AI事業者に対して、記事の無断使用の差し止め及び削除並びに約21億6千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴をしました。
私は生成AIについては詳しくありませんが、私の大雑把な理解では、生成AIの利用者が質問をすると、生成AIがインターネット上の膨大な情報から適切な情報を探し出して文章を組み立てた上で回答する、というイメージです。
今回の読売新聞の提訴の内容としては、インターネット上に存在する「読売オンライン」の記事や画像が無断で使用されたという主張のようです。
具体的にどの法律の問題かといいますと、著作権法が問題となります。
著作権法では、原則として、著作物の権利は著作者が独占的に利用できることになっています。
例えば、小説であれば、小説家が書いた小説の著作権はその小説家が持っています。音楽や映画もそれを作った人が著作権を持っています。
それでは、新聞記事が著作物かというと、単なる事実の伝達、例えば、天気予報、株価、為替レートなどを伝えることは著作物ではなく、記者の見解や思想が含まれている記事は著作物にあたるといわれています。
ですから、まず、生成AIが取得した情報が著作物に該当するかが問題となります。
では、記事が著作物に該当すれば直ちに違法になるかというと、そうではありません。
著作物は「原則として」著作者が独占的に利用できますが、「例外」もあります。
例外の1つとして、ルールに従った「引用」があります。
そのルールには幾つかありますが、今回は2つに限定して述べます。
まず、引用部分と引用した人の意見部分が明確に区別されていなければなりません。
例えば、カギ括弧などを使用して、新聞記事にはこう書いてあった、しかし、自分はこういうふうに考える、という形を取る必要があります。
次に、引用部分の出典を明示する必要があります。
そのように考えると、生成AIが回答するときに、引用部分と生成AIの意見とが区別されているか疑問ですし、出典の明示についても通常は行われていないと思われます。
仮に、著作権法に違反していると判断された場合には損害額が争点となります。損害額の判断も難しい論点ですが、今回は省略します。
この裁判は非常に興味深い裁判です。今後も引き続き注目していきたいと思います。