6月に夫婦別姓に関する重要な最高裁の判決が二つ出ました。
一つは6月23日に出た大法廷判決で,もう一つは6月28日に出た小法廷判決です。
大法廷判決のほうが重要ですので,大法廷判決を中心にお話しします。
以前,「夫婦別姓訴訟が小法廷から大法廷に回付された」というお話をしましたが,今回その判決が出されたのです。
以前のお話を簡単に復習しますと,最高裁には大法廷と三つの小法廷があって,小法廷で裁判官の意見が分かれているときなどは大法廷に回付することができます。
今回の裁判の争点は,夫婦別姓の結婚制度を認めていない現在の法律が憲法違反かどうかという点です。
3組の事実婚の夫婦が提訴をして,別々に最高裁まで上がってきて,今回,最高裁は3件の裁判について大法廷でまとめて判断しました。
結論は,夫婦別姓を認めない現行の法律制度は合憲であるとの判断でした。
実は,2015年(平成27年)にも同じ争点について最高裁は合憲判断を示しています。
最高裁判所が判例を変更するのは,社会情勢の変化や国民の価値観などが大きく変化して,以前の判例では大きな不都合が生じているような場合です。
しかし,今回の判決は前回の判決から5年半程度しか経っていません。
しかも,判断の対象となるのは,2018年に事実婚の夫婦が婚姻届を提出しようとして受理されなかったことです。
ですから,2018年に「婚姻届を受理しなかった」ことが当時の社会情勢や価値観に照らして憲法違反とするべきか,が問われます。
最高裁としては,前回の合憲判断が出てから3年間で社会情勢や価値観が大きく変化したのかというと,少しは変化したが大きくは変化していない,という判断に至ったのだと思います。
個人的には最高裁判決が3年程度で変更されるのは社会の安定性という点から好ましくないと思いますので,結論としては妥当だと思います。
もっとも,今回の判決では15人の裁判官のうち4人が違憲の判断を示しましたし,社会情勢や価値観が変化してきていることは間違いないと思います。
国会での活発な議論を期待したいと思います。