前回に引き続き民事執行法の改正についてお話ししたいと思います。
今回は,「金融資産の開示」についてです。
まず,基本的なことから押さえておきましょう。例えばお金を騙し取られた人が騙した人を相手に民事裁判を起こして勝訴判決を得たとします。
しかし,勝訴判決を得ても自動的にお金は戻ってきません。
相手が任意で支払ってくれればいいのですが,相手が自ら支払わない場合は,裁判所に対して強制執行を申し立てる必要があります。
この手続が民事執行です。
以前より,日本の民事執行法は実効性が弱いと言われてきました。
強制執行とは相手の財産を差し押さえて強制的に自分のものにできるという手続なんですが,以前は相手の財産がどこにあるのか全て自分で調べないといけなかったんです。
ですから,例えば,騙されてお金を相手名義の口座へ振り込んだような場合には相手名義の振込口座を既に知っているので,その口座を差し押さえることはできたのですが,騙し取った人がお金を別の口座に移し替えてしまうと,元々知っている口座を差し押さえても,数百円しか残っていなかったということがしょっちゅうありました。
今回の改正ではその点を強化しました。判決が確定すれば,金融機関に対して本店及び全国の支店について相手名義の口座の有無を調べてもらうことができるようになりました。
従来は裁判に勝ってもお金を取り戻せないことが多かったのですが,今回の改正で裁判に勝てばお金を回収できる可能性が高まりました。