ゴーン氏逃亡

ゴーン氏逃亡

昨年末,凄いニュースが飛び込んできました。

日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏がレバノンに逃亡したというニュースです。

音響機器の箱に隠れてプライベートジェットで海外へ渡ったとか,いろいろと報道されていますが,正確な情報は分かりませんので,法律的に解説できる範囲で解説したいと思います。

まず,現在,行われている裁判はどうなるのでしょうか。

ゴーン氏は金融商品取引法違反と会社法違反(特別背任罪)で起訴されて,現在,裁判中です。

裁判には被告人が出頭しなければならないので,裁判は中断してしまいます。

ゴーン氏が裁判所に出頭しない限り裁判は再開できません。

審理を行えないので裁判所は判決も出せません。

では,どうすれば裁判を再開できるのかというと,レバノンからゴーン氏を日本に引き渡してもらって,日本の法廷に出頭すれば再開できます。

しかし,日本とレバノンとの間では犯罪人引き渡し条例が締結されていないので,レバノンは日本に対してゴーン氏を引き渡す義務がありません。

犯罪人引渡条約というのは,2国間で締結する条約であり,お互いに「犯罪者があなたの国に逃亡したので捕まえてうちの国に引き渡してください」と要求できることを約束する条約です。

日本は,この条約をアメリカと韓国しか締結していません。

「なんで2カ国しか条約を締結していないのか」と思われるかもしれません。

これには,いろいろと難しい問題があるようです。

条約を締結すると,犯罪人を引き渡す義務が生じますので,死刑制度のある国へ引き渡すと死刑になる可能性があります。

この点,日本には死刑制度があります。しかし,特にヨーロッパでは死刑制度が廃止されているのが主流です。

ヨーロッパの国々からすると,「日本に犯罪者を引き渡せば死刑になる,自国の人間が死刑になるのは好ましくない。」という価値観があるようです。

ですので,この問題は死刑制度の是非という重大な問題に関係してきます。

それでは,少し話を変えて,ゴーン氏が出国審査を経ずに海外へ出国したのであれば,どういう犯罪が成立するのでしょうか。

この場合,出入国管理法25条に違反しており,不正出国の罪が成立します。

法定刑は1年以下の懲役などです(入管法71条)。

また,保釈中に逃亡した場合,何らかの犯罪に当たるのでしょうか。

実は,保釈中の逃亡は犯罪にはあたらないのです。

日本の法律では,刑務所や拘置所などの刑事施設で拘束されている人が逃亡した場合には,逃走罪(刑法97条・1年以下の懲役)にあたりますが,保釈中の人は「刑事施設で拘束」されていないので,逃走罪には該当しません。

この点,先日のニュース(1月7日)によると,法務省が保釈中の逃走にも逃走罪を適用できるようにするための法改正を行いたいという方針を述べたようです。

しかし,仮に法改正を行って,保釈中の人についても逃走罪が適用できることになったとしても,今回のように海外に逃走して,その国との間で犯罪人引渡条約が締結されていない場合には,日本に引き渡されなければ処罰のしようがないということになります。

相続問題のことならお任せくださいLeave the inheritance matters to us.

ベンナビ相続はこちらから お問い合わせはこちら