文部科学省の前局長が息子を東京医科大学へ入学させたという事件です。
この件で,前局長は受託収賄罪で起訴され,大学の前理事長と前学長が贈賄で起訴されました。
この事件の特徴は,文部科学省の役人が大学側へ「私立大学研究ブランディング事業」に選定されるための助言を行うという「便宜」を図ることの見返りに,息子を不正に入学させたという容疑だという点です。
文部科学省の役人は公務員であり,公務員が職務に関連して賄賂をもらうと収賄罪が成立します(刑法197条)。
ここで注意しなければいけないのは,「裏口入学」そのものが犯罪だというわけではないという点です。
この事件は,あくまで「贈収賄」という刑事事件の話です。
仮に,この文科省の役人が大学に有利になるように「便宜を図り」,その見返りに「高級車」をもらっても,やはり受託収賄罪です。
「見返り」が「裏口入学」だから犯罪なのではありません。
つまり,収賄罪がなぜ犯罪なのかというと,公務員が職務に関連して金品などを受け取ると,公平であるべき行政が歪められてしまうからです。
受け取るものが「裏口入学」であっても「高級車」であっても「現金」であっても,行政が歪められることが問題なのです。
これに対し,民間人が私立大学に金銭を渡して子どもを「裏口入学」させても,「行政が歪められる」ことはありませんので,それは「賄賂」とは言わず,犯罪になりません。
ところで,今回のニュースの事件とは逆に,民間人が国公立大学に金銭(金銭でなくても良いのですが)を渡して子どもを「裏口入学」させると,犯罪になります。
国公立大学の教職員は「みなし公務員」といって,公務員とみなされており,この場合,「公務員」が金銭等の「賄賂」をもらって,「裏口入学」という「便宜」を図ることになり,「国公立大学の行政が歪められる」からです。