未成年者による不法行為

未成年者による不法行為

今回は、未成年者による不法行為という内容で書いてみます。

例えば、自分の子供が自転車に乗っていて、歩道をスピードを出し過ぎて走ったために他人に追突して怪我を負わせたとします。

子供はどういう責任を負うでしょうか?

この場合、追突したことが故意(わざと)でもない限り刑事責任は考えなくても良いでしょう。問題は民事責任(不法行為責任)です。

民事責任とは、金銭による損害賠償責任のことです。具体的には、治療費、慰謝料、休業損害、逸失利益などが考えられます。

子供の責任の有無については、その子供の年齢が重要になってきます。

例えば子供が5歳だとしましょう。

この場合、子供には「責任能力」がないということになり、損害賠償責任を負いません(民法712条)。

「責任能力」とは、「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」のことです。平たくいうと、自分のやったことが悪いことで、その結果、何らかの責任が生じることが理解できる能力です。

では、子供が15歳であればどうでしょう。

通常、「責任能力」があるとされるでしょう。この場合、子供が損害賠償責任を負います。

では、その境目はどこなんでしょうか?

これは一概に何歳と決まっていません。人にもよるし、その行為の種類にもよります。

もっとも、裁判例では12歳前後で責任能力を認めているものが多いようです。

ここまで、一応、子供の損害賠償責任についてお話ししましたが、子供が損害賠償責任を負うとか負わないとかいっても、子供には十分な資力がないのが通常です。

被害者からすれば親に支払ってもらいたいと思うのが普通です。

それでは、親の責任はどうなのでしょうか?

民法では、未成年者に責任能力がない場合には、原則として「監督する法定の義務を負う者」が損害を賠償する責任を負うとしています(民法714条1項)。「監督する法定の義務を負う者」とは通常は親です。つまり、子供に「責任能力がない」場合には親が賠償責任を負うことになっています。

では、子供が15歳で「責任能力がある」場合はどうでしょう?

法律の文言からすれば、未成年者に責任能力がある場合には、親は責任を負わないようにも読めます。

しかし、それでは、被害者が救済されないケースが多く出てきます。「子供はお金がないので払えない、親は責任がないので払わない」となってしまいます。

そこで、現在では、未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者(通常は親)の指導が不十分であったために未成年者が不法行為を起こしたといえる場合には、親も責任を負うという考え方になっています。

したがって、いずれにしても、子供にしっかりと安全についての指導をしていないと親が損害賠償責任を負うことがあり得ます。

また、しっかり指導していたつもりでも事故は起こります。万が一の場合に備えて、賠償責任保険に加入しておくことをお勧めします。

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