先日,職場での旧姓使用に関する判決が東京地裁でありました。
私立学校の教員が職場での旧姓使用を認めるように求めていた訴訟です。
判決は学校側の言い分を認めて教員の請求を棄却しました。
最近,旧姓使用の問題や夫婦別姓の問題などがかなり議論されています。
東京地裁の判決を解説する前に,昨年12月に出された夫婦別姓に関する最高裁判決を見ておきましょう。
この裁判は,夫婦別姓を認めていない現行民法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた裁判です。
最高裁は,夫婦別姓を認めていないことは憲法には違反しないとの判断を示したのですが,その理由の一つとして,旧姓を通称として使用することが社会的に広まっているので,夫婦別姓制度を導入しなくてもそれほど不利益はない,ということを述べています。
実際,国家公務員では平成13年に旧姓使用が認められていますし,東京都立の学校では平成14年に認められています。弁護士も旧姓使用は認められていますし,3年ほど前に一部上場企業などを対象としたアンケートでは旧姓使用を認めている企業の割合は64.5%だったそうです。
まさに旧姓使用は「社会的に広まっている」といえるでしょう。
では,今回の東京地裁の判決を見てみましょう。
今回の判決は,旧姓について,「個人が結婚前に築いた信用,評価の基礎となるもので,通称として使う利益は法律上保護される」と認めています。
しかし,「医師など旧姓が認められない国家資格も多数ある。」,戸籍上の氏は旧姓に比べて,「より高い個人識別機能がある」等を理由として「旧姓が戸籍名と同じように使われることが社会で根付いているとまでは認められない」と述べました。
判決文全文を読んだわけではないのですが,さきほどの最高裁判決と比べると若干違和感があります。
最高裁は旧姓使用が社会的に広まっていることを理由の一つとして,夫婦別姓制度がなくても不利益は大きくない,と述べていましたので,今回の判決は最高裁の認識と整合性がないように思えます。
教員は控訴するとのことですので控訴審にも注目したいと思います。