先日のニュースで,音楽イベントが開催されたときに,イベント会場の近くで雷に撃たれて亡くなられた方の裁判の判決がありました。
遺族であるご両親がイベント会社に対して損害賠償を求めた裁判です。
大阪地裁は遺族の請求を退けました。
報道によると,裁判所は「落雷については抽象的には予見できたが具体的な予見は無理だった」「野外での落雷回避は自己責任」「コンサート会場から距離があったので避難誘導をする義務はなかった」などと述べているようです。
これに対しては,ご両親は「自己責任というが一体どこに非難しろというのか」というコメントを述べたとされています。
なかなか難しい問題です。この判決が妥当かどうかというのは判決文を見ていないので簡単には答えられませんが,参考になる判決があります。
平成8年にサッカー大会の試合中に高校生が雷に打たれて重い障害が残った事故がありました。
被害者が通っていた高校(私立)と大会主催者に対して裁判を起こしました。
この裁判は,被害者が一審(平成15年)も二審(平成16年)も敗訴しましたが,最高裁で審理のやり直しを命じられ(最高裁平成18年3月13日判決),その結果,被害者の逆転勝訴になりました。
つまり,裁判官でも判断が分かれるほど難しい事案だったということです。
一審と二審は,雷がグラウンドに落ちるということを予見するのは難しいだろうと述べました。
しかし,最高裁は,雷鳴が聞こえていたなら雷がいつ落ちてもおかしくはないと考えないといけないと述べました。
サッカーの事案も今回の事案も大変難しい事案です。
ただ,この2つの事案を比べてみると,サッカーの試合のほうは,サッカーをしている試合の最中にピッチの上で雷に撃たれています。
今回の事故はコンサート会場の外であるというところが,やはり大きな違いなのではないかと思います。