高額のお金を納めれば誰でも保釈されるのか

高額のお金を納めれば誰でも保釈されるのか

こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。

有名人が薬物事件などで捕まって、「3000万円で保釈」などのニュースを見ることがあります。

こういうニュースが出ると、「金持ちはいいなあ。大金を積めば無罪放免になるんだねぇ」という人がいます。

これは大きな誤解です。まず、保釈という制度を説明しましょう。

被疑者が起訴されると「被告人」という立場になります。被告人は全員が身体拘束されるわけではなく、「勾留」の要件(刑事訴訟法60条1項)に該当する場合に刑事施設で拘束されることになります。

起訴から一審判決までには短い場合で2か月程度、長い場合には2年程度かかります。

被告人が勾留されていると、原則として、この期間をずっと刑事施設内で過ごすことになります。

保釈という制度は、勾留されている被告人に対して「裁判が終わるまで刑事施設の外で生活しても良い」と許可を与える制度です。

ですから、まず、保釈は「無罪放免」ではありません(裁判を控えている身です)。

そして、多額のお金さえ積めば保釈が認められるわけでもありません。

保釈が認められるためには、「証拠隠滅のおそれが低い」と裁判官が判断してくれなければなりません。被告人を外に出したことによって証拠隠滅などが行われてしまうと適正な裁判ができなくなるからです。

裁判官により証拠隠滅のおそれが低いと判断されれば保釈の方向になるのですが、裁判が終わらないうちに被告人に逃亡されては困ります。被告人にはきちんと裁判に出てもらわないと裁判が進まないからです。

そこで、逃亡を防止するために「逃亡したらお金を没収しますよ」とプレッシャーをかけるために被告人からお金を預かるのです。それが保釈金です。きちんと裁判に出れば保釈金は返還されます。

つまり、保釈金は被告人にとって「人質」のようなものであり、「没収されたら辛い」と感じる金額でなくてはなりません。何十億円も資産がある被告人に保釈金150万円を出させても、「そんな金、没収されても構わない」と思って逃亡するかもしれません。

ですから、多額の資産を持っている被告人の場合、保有する資産の程度に応じて相応の金額を設定する必要があるのです。その結果、多額の資産を持っている有名人の場合、保釈金が高額になるのです。

日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告人は保釈金15億円を捨てて逃亡しました(コラム「ゴーン氏逃亡」参照)。ゴーン氏にとって15億円は大した金額ではなかったのでしょうね。

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宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫

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