こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。
法律家ではない一般の方と話していると、「犯罪」とそうでないものの区別があまり知られていないと感じます。
そこで、今回は「犯罪」とそうでないものの区別の仕方について書いてみます。
「犯罪」を法律学的に定義すると、「構成要件に該当する違法で有責の行為」ということになります。しかし、これは学問的な定義であって、今回はこの定義を使いません。
今回、覚えてもらいたいのは、犯罪とは「法律や条例によって刑罰が規定されている行為」ということです。
最も典型的なのが「刑法」という法律で、例えば、199条では「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑に処する。」と規定されています。この中の、「死刑」とか「拘禁刑」とかが刑罰です。
刑罰を定めている法律はものすごくたくさんあります。
例えば「軽犯罪法」という文字どおり軽い犯罪を処罰する法律があるのですが、その中の一つに、道路や公園で「たんつば」を吐くと「拘留又は科料」という刑罰が規定されています(1条26号)。
他にも、例えば、著作権法ではインターネット上に無断でテレビ番組などをアップロードする行為には10年以下の懲役などの刑罰が規定されています(コラム「ファスト映画刑事裁判」参照)。
貸金業法では、無登録で貸金業を営むと10年以下の懲役などの刑罰が規定されています。
ではポイ捨ては犯罪でしょうか。ポイ捨ては、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で刑罰が規定されているので犯罪です。
「それじゃあ、犯罪だらけじゃないか」と言われそうですが、法律や条例で規定されていても刑罰が規定されていなければ犯罪ではありません。
例えば、いわゆる乾杯条例というのがあります。京都市で制定されたのが最初で、西宮市や伊丹市でも制定されました。
これらの条例では、「市民は清酒の普及に努めましょう」というようなことが書かれているのですが、「日本酒で乾杯しなかった者は○○の刑に処する」とは書いていません。
ですから、日本酒で乾杯しなくても犯罪にはなりません。
このように、「これは犯罪か」が気になった場合は、法律や条例の条文を読んで、刑罰が定められているかどうかで確認することになります。
**最後までお読みいただき、ありがとうございます。**
宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫