被相続人が生前に作成していた遺言公正証書により指定されていた弁護士が遺言執行手続き(不動産の移転登記、預金の払戻等)を行ったようであるが、遺言に従った預貯金の分配を行ってくれないとの相談であった。
当該遺言書には遺言執行者の報酬についての記載がなかったにもかかわらず、遺言執行者は独断で報酬額を決めて、その報酬額に異論がなければ報酬額を控除してから預金を分配するとの態度であった。
依頼者より詳しく話を伺うとともに遺言執行者より依頼者に送付された報告書等の書類の精査を行ったところ、遺言執行に関して多数の不明瞭な処理が見つかった。
また、本来、遺言執行者の報酬については、遺言書で規定されていない場合に遺言執行者自身が勝手に決められるものではないにもかかわらず、自分で決めた報酬額に同意しない限り預貯金の分配を行わないという態度は極めて悪質であると判断した。
そこで、家庭裁判所に対して遺言執行者の解任審判の申立てを行った。
解任審判において、裁判官は遺言執行者を説得するとともに遺言執行者の報酬額を控除せず遺産を分配するように指示を行った。
遺言執行者が裁判官の指示に従い金銭を依頼者に振り込んだことから、解任審判の申立てを取り下げた。