(事案を簡略化して説明します。)
H1とH2は夫婦であり、H1は複数の会社の代表取締役社長・会長の職に就いていました。
AはH1とH2の二女でした。
Aは小学校に入学する頃から、虚言、盗み、家出などの問題行動が目立つようになり、中学に入学後も複数回、家庭裁判所の保護処分を受け、16歳の時に少年院送致処分を受けました。
そして、Aは少年院の仮退院中に家出をし、バーやキャバレーを転々とし、20歳の時に当時暴力団幹部であったBと婚姻しました。
また、Aは、H1とH2がBとの婚姻に反対であることを知りながら、結婚披露宴の招待状に招待者としてBの父と連名でH1の名も印刷してH1らの知人にも送付しました。
H1とH2はAを相続人から廃除することを求めて家庭裁判所に審判を提起しました。
裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:平成4年12月11日
民法892条は、推定相続人が「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」には、被相続人は推定相続人の廃除を請求できるとしています。
そこで、本件のAの行為が、「虐待」「重大な侮辱」「その他の著しい非行」に該当するかが本件の争点です。
東京高裁は、上記記載の事実関係を認定した上で、「反社会的集団への帰属感を強め、かかる集団である暴力団の一員であった者と婚姻するに至り、しかもそのことをHらの知人にも知れ渡るような方法で公表したものであって、Aのこれら一連の行為により、Hらが多大な精神的苦痛を受け、また、その名誉が毀損され、その結果HらとAの家族的共同生活関係が全く破壊されるに至り、今後もその修復が著しく困難な状況となっている」と述べて、廃除を認めました。