遺産の分割の方法としては,4種類あります。
「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つです。それぞれ、メリットとデメリットがあります。
「現物分割」とは、遺産の現状をそのままの状態で分割することです。
例えば、遺産の中に複数の不動産がある場合、各相続人が1つずつ不動産を取得する、というようなものです。
この「現物分割」はシンプルなのが長所です。
相続人が3人いて土地が3つあるとします。
「俺はこの土地が欲しい。」「じゃあ、俺はこれが欲しい。」「僕はこれでいいよ。」と合意ができれば、すぐに解決します。
しかし、不動産が1つしかない場合などは難しいです。
不動産が1つである場合に現物分割しようとすれば、その土地を分筆することになります。
ただし、土地を分筆する場合、測量をする必要がありますし、費用もかかります。
次に、「代償分割」とは、ある遺産を取得する代わりに、他の相続人に金銭を支払って解決するという方法です。その際に支払う金銭のことを「代償金」といいます。
たとえば、主な遺産が実家の土地と建物だけという場合、一人の相続人がその土地と建物を相続して、他の相続人に対して金銭(代償金)を支払うという形になります。
この「代償分割」のメリットは、相続人間で合意ができた場合には、比較的簡単に処理が可能です。
なぜなら、不動産の名義を移転することと、お金を払うことだけで済むからです。
しかし、デメリットとして、2点挙げることができます。
1つは、代償金の額について争いが起こりやすいということです。
つまり、不動産の評価を幾らとするかについて合意できない場合があります。
デメリットの二つ目は、代償金を用意できない場合がある、ということです。
不動産の価格が大きい場合などには、代償金を準備できなくて「代償分割」が実現しないことがあります。
分割方法の3つめですが、「換価分割」というのがあります。
「換価分割」とは、遺産を売却して換価した売却代金を、相続人の間で分配する方法です。
「現物分割」が困難で、かつ、どの相続人も遺産の取得を希望せず、したがって、「代償分割」もできないような場合には、遺産を売却さえできれば解決するという点がメリットです。
また、この方法だと、実際に売れた価格が適正な市場価格ということになりますので、金額に関する争いも起きにくいといえます。
しかし、問題点としては、購入希望者が現れないと売却できない点、また、購入希望者が現れた場合でも、売却額について相続人の間で合意できないと売却が実現しない点などがあります。
最後に、「共有分割」というのは、遺産をそのまま共有とする、という方法です。たとえば、遺産の不動産の名義を「長男2分の1,二男2分の1」などと共有として登記するという形です。
これまでに述べた、「現物分割」「代償分割」「換価分割」のいずれも実現しない場合のやむを得ない手段です。
「共有分割」も遺産分割の一種ではあるのですが、最終的解決とはいえません。
いずれ、共有状態を解消するか売却することが必要になるでしょう。
したがって、あくまで暫定的な解決にすぎません。
このように「遺産分割」といっても複数の方法があり、それぞれメリット、デメリットがあります。
実際の遺産分割では、遺産の種類や内容、相続人の希望など、複雑な要素が絡み合いますので、何がベストかは、それぞれの事案によって異なります。