(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hは、平成9年8月7日、「弟Aにはなんにも相続させない」との自筆証書遺言を作成しました。
平成25年2月6日、Aが死亡しました。Aの代襲相続人はBです。
平成27年7月14日、Hが死亡しました。Hの法定相続人はB及びHの妹Cでした。
裁判所:東京地方裁判所
裁判年月日:令和2年6月16日
「相続させない」旨の遺言は、相続させないとされた相続人が被相続人より先に死亡した場合、その代襲相続人に相続させない趣旨を含むか。
東京地裁は「遺言者の死亡時に当該推定相続人が既に死亡しているときには、相続開始時において相続人が権利主体として存在していることを要する同時存在の原則(民法886条1項参照)に照らし、当該推定相続人に対する遺言の効力は失われると解される。その結果、当該推定相続人の代襲相続人は、当該推定相続人が受けるべきであった法定相続分について相続分を有することとなる(民法901条2項)。このように解しても、遺言者は、当該推定相続人の代襲相続人にも遺言の効力を及ぼそうと考えるなら、その旨を補充的に記載しておくこと等によって容易にその目的を達することができるから、それを超えて、当該推定相続人に対する遺言の効力を当然にその代襲相続人にも及ぼすことは相当ではない。」と述べて、Bの代襲相続を認めました。