(事案を簡略化して説明します。)
遺言者Hは「遺言者H所有の不動産である東京都荒川区○○○△丁目□番□号をAに遺贈する」旨の自筆証書遺言(本件遺言)を作成した後、死亡しました。Hは当該所在場所の建物とその敷地を所有していました。
AはHの二男でした。
これに対して、Hの長男であるBは、本件遺言は不動産の特定として住居表示が記載されており、住居表示は住居の所在場所の表示であるので、本件遺言書が記載している不動産は建物のみと解すべきである、と主張しました。
裁判所:最高裁第三小法廷
裁判年月日:平成13年3月13日
不動産につき住居表示で記載した遺言は当該所在地の建物のみを目的としたものか敷地も含むものかが問題となりました。
最高裁は、「遺言の意思解釈に当たっては、遺言書の記載に照らし、遺言者の真意を合理的に探究すべきところ、本件遺言書には遺贈の目的について単に『不動産』と記載されているだけであって、本件土地を遺贈の目的から明示的に排除した記載とはなっていない。(中略)そうすると、本件遺言書の記載は、Hの住所地にある本件土地及び本件建物を一体として、(中略)Aに遺贈する旨の意思を表示していたものと解するのが相当であり、」と述べて、建物のみではなく土地も含む趣旨の遺言であると判断しました。