【判例解説】債務の肩代わりは特別受益となるか

【判例解説】債務の肩代わりは特別受益となるか

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hが死亡し、法定相続人は長女Aと長男Bでした。Hは生前、Aの夫の身元保証人となっていました。

Aの夫が勤務先で不祥事を起こしたので、Hはその責任を問われ300万円をAの勤務先に支払っていました。

Hは、亡くなるまで、AやAの夫に対して当該300万円を請求することはありませんでした。

裁判所と裁判年月日

裁判所:高松家庭裁判所丸亀支部
裁判年月日:平成3年11月19日

本件の争点

HがAの勤務先に300万円を支払ったこと自体は、自己の保証債務を履行したものであり、Aに対する「生計の資本としての贈与」(民法903条1項)とはいえないと考えられますが、Aの夫に対する求償権を行使しなかったことは「生計の資本としての贈与」(特別受益)と解する余地があるのではないか、が問題となります。

結論

裁判所は、HがAの夫に対して300万円の支払いを請求しなかったことを「求償債権の免除」と解釈したうえで、「被相続人の右金銭の支払いは、自己の身元保証契約上の債務を履行したものであるから、それ自体は申立人(Aのこと)に対する『生計の資本としての贈与』とは解することができないけれども、申立人の夫に対する求償債権の免除は、申立人に対する『相続分の前渡し』としての『生計の資本としての贈与』と解するのが相当である。」と判示して、特別受益に該当すると認定しました。

また、本裁判では、免除額300万円について相続時の金銭評価額を997万円として算定しています(コラム「特別受益の評価基準時」参照)。

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