(事案を簡略化して説明します。)
遺言者Hの法定相続人は妻Aと妹B、弟Cでした。
Hは、昭和55年4月、全財産をAに相続させる旨の自筆証書遺言(旧遺言)を作成しました。
旧遺言の他に、平成19年3月2日付で、「Hの全財産をHの妹Bに相続させ、Bを祭祀承継者及び遺言施行者とする」という内容の遺言公正証書(本件遺言)が存在します。
平成19年8月にHが死亡し、本件遺言の有効性が争われました。
裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:平成25年3月6日
Hの遺言能力が本件の争点です。
Cは、本件遺言当時、Hは重度のうつ病、認知症に罹患しており、遺言能力を欠いていたと主張しました。
東京高裁は、詳細に診療録や看護日誌などを検討し、
①Hが本件遺言書作成当時、うつ病と認知症に罹患しており、幻視幻聴、妄想などの症状があったこと
②BはH本人の希望に反してBの一存でHを転院させており、また、BはHに無断でHの住所をBの自宅住所に変更して、無断で印鑑登録を行っていること
③妻Aが生存中であるにもかかわらず、Hが全財産をBに相続させる旨の遺言を作成する合理的理由が見当たらないこと
等の事情から、
「Hは、本件遺言時に遺言事項を具体的に決定し、その法律効果を弁識するのに必要な判断能力たる意思能力を備えておらず、遺言能力があったとはいえない」と判示しました。
(遺言能力については、コラム「認知症の人が作成した遺言書は無効になるのか」もご参照ください。)