(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hは昭和22年にAと婚姻し、Aとの間にB1とB2の2人の子をもうけました。
Cは昭和46年頃からHと親密な関係になり、生活費の援助などを受けていました。
昭和62年にAが亡くなった後は、HがCと過ごす時間が長くなりました。
平成9年にHが死亡し、Hの遺産額は1億4000万円でした。CはB1とB2に対して財産分与として各1000万円の支払いを求めました。
裁判所:最高最大一小法廷
裁判年月日:平成12年3月10日
一般に、内縁の配偶者には相続権は認められないと解されているところ、内縁の配偶者の一方が死亡した場合に、離婚による財産分与に関する民法768条が類推適用されるかが本件の争点です。
最高裁は「内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法768条の規定を類推適用することはできないと解するのが相当である。民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。」と述べて、民法768条の類推適用を認めませんでした。