(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hの法定相続人は、妻A、子B、子Cでした。
Hは生前、Bに対して4億円の生前贈与を行ったうえ、「全財産の2分の1をAに、2分の1をBにそれぞれ相続させる。」という旨の遺言公正証書を作成しました。
H死亡後、CはA及びBに対して遺留分減殺請求を行いました。
H死亡時の遺産総額は16億円でした。
裁判所:最高最大一小法廷
裁判年月日:平成24年1月26日
本件の争点は、ⅰ)相続分の指定が遺留分減殺請求された結果、複数の遺留分侵害者がいる場合に、相続人の間で指定相続分がどのように修正されるか、ⅱ)持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合における具体的相続分の算定方法、の2点です。
最高裁は、上記争点ⅰ)について、
「相続分の指定が、特定の財産を処分する行為ではなく、相続人の法定相続分を変更する性質の行為であること、及び、遺留分制度が被相続人の財産処分の自由を制限し、相続人に被相続人の財産の一定割合の取得を保障することをその趣旨とするものであることに鑑みれば、遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正されるものと解するのが相当である」
と判示しました。
つまり、本件においては、法定相続分を超える相続分を指定されたBだけでなく、Aの指定相続分も修正されることになります(遺留分割合を超える相続分を指定されているので)。
また、上記争点ⅱ)については、
「遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が減殺された場合、持戻し免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効し、当該贈与に係る財産の価額は、上記の限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当である。持戻し免除の意思表示が上記の限度で失効した場合に、その限度で当該贈与に係る財産の価額を相続財産とみなして各共同相続人の具体的相続分を算定すると、上記価額が共同相続人全員に配分され、遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保し得ないこととなり、上記の遺留分制度の趣旨に反する結果となることは明らかである。」
と判示しました。
つまり、本件において、Cは、遺産総額16億円の8分の1(2億円)を取得するとともに、特別受益4億円の8分の1(5000万円)も取得できることになります。