(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hには子Aと子Bがいました。
H死亡後、Aは生命保険金約1億円を受領しました。Hの遺産総額は約1億円でした。
BはAが受領した生命保険金は特別受益に該当すると主張しました。
裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:平成17年10月27日
原則として、死亡保険金請求権は保険金受取人の固有の権利であり、特別受益には該当しませんが、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生じる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。」とするのが最高裁の判例です(最高裁平成16年10月29日決定)。(コラム「生命保険金は特別受益になるか」参照)
本件は、Aが受領した死亡保険金が約1億円という高額であるため、上記最高裁のいう「特段の事情」がある場合といえるかが問題です。
東京高裁は「受領した保険金額は合計1億0129万円に及び、遺産の総額(相続開始時評価額1億0134万円)に匹敵する巨額の利益を得ており、(中略)それぞれの生活実態及び被相続人との関係の推移を総合考慮しても、上記特段の事情が存することが明らかというべきである。」と述べて、特別受益に準じて持戻しの対象となるとの判断を示しました。