(事案を簡略化して説明します。)
昭和49年7月、被相続人HはAと再婚しました。
昭和58年4月にAが入院した際に、Hが家の中を探したところ、家の中からはA名義の預金通帳しか出てこず、H名義の預金通帳は見つかりませんでした。そして、A名義の預金通帳にHの年金が振り込まれていたことが判明しました。
そのため、HがAを追求したところ、両者の関係は悪化し、別居生活となりました。
昭和63年1月10日、Hは「Aの悪意に満ちた不正な行為」として、Hの年金をA名義の預金通帳に入金していること、Aの娘の家屋新築にあたって金員を出していることを挙げて、「事実上離婚が成立しているものと考えて私の現在の財産年金の受給権はAにわ一切受取らせないようお願ひします。」という趣旨の自筆証書遺言(本件遺言)を作成しました。
Hは昭和63年11月19日、死亡しました。Hの推定相続人はA及びHの前妻の子B,Cでした。
裁判所:広島高等裁判所
裁判年月日:平成3年9月27日
本件遺言の解釈が本件の争点です。
第一審は、本件遺言の趣旨はAの相続分を零と定めたものであると解釈しました。
広島高裁は「別居の事情、別居から死亡までの事情、本件遺言書の記載内容を検討すると、本件遺言書の趣旨は、原審判のように、抗告人(A)の相続分を例と定めた趣旨であると解することはできず、右遺言の趣旨は、抗告人から自己の推定相続人としての遺留分をも奪って、自己の遺産を与えまいとしたもの、すなわち、抗告人を被相続人Hの推定相続人から廃除する意思を表示したものと解するのが相当である。」と述べて、原判決を取り消して広島家裁へ差し戻しました。