【判例解説】自筆証書遺言について相続人を指定する趣旨であり無効とした事例

【判例解説】自筆証書遺言について相続人を指定する趣旨であり無効とした事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

遺言者Hには子がなく、親族との養子縁組を希望していたが実現しませんでした。

Hは、自筆証書遺言(本件遺言)を作成しました。本件遺言の内容は以下のとおりでした。

「第一相続人Aを指定 第二相続人Bを指定 第一相続人不承認の場合は第二相続人とする。第二相続人も不承認の場合は兄弟姉妹で財産を処分することなく、相談のうえ相続人を選定し○○家の再興をお願いします。」

Hが死亡し、Hの法定相続人はC、D及びE(Hの兄弟姉妹)でした。

裁判所と裁判年月日

裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:昭和60年10月30日

本件の争点

Aは、本件遺言によりHはAに遺産の全てを遺贈したものと主張し、Cらは、本件遺言によりHは旧民法の相続人の指定を行おうとしたものであり、現行民法では無効であると主張しました。

結論

東京高裁は「Hは死の直前まで養子をとる希望を抱き、その候補がAとBであったことは明らかである。この事実に本件遺言が第一相続人A、第二相続人Bを指定する旨記載し、第一相続人も第二相続人も承認しないときは兄弟姉妹で相続人を選定し○○家の再興を願うとし、遺産の承継そのものには触れていないところをみると、(中略)Hの真意は、遺産を念頭においてその分散を避けるため受贈者の順位を定め、これに遺贈することにあるのではなく、旧制度におけるようにHの「家」を継ぎ○○の姓を絶やさないようにするため、相続人を定めるということにあったとみるべきであり、(中略)相続人とならない者に対し遺産を遺贈する趣旨で本件遺言をしたものではないというべきである。」として、本件遺言は「現行民法上認められていない相続人の指定を定めたに帰するから、効力を生じる余地はない」と結論付けました。

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