(事案を簡略化して説明します。)
被相続人HはF建設を経営していました。F建設はHの個人事業に近く、Hと経済的に密着していました。
Hの相続人の1人であるAは、F建設が経営不振の時、たびたび資金援助を行っていました。
裁判所:高松高等裁判所
裁判年月日:平成8年10月4日
会社への資金援助は、あくまでも会社に対する貢献であって、被相続人の財産の維持又は増加に貢献したとはいえず、基本的には寄与分は認められません。
しかし、会社とは名ばかりであって実質的には被相続人の個人事業に近い場合に、会社へ資金援助した相続人に寄与分が認められないかが本件の争点です。
高松高裁は「F建設は被相続人が創業した株式会社であって被相続人とは別人格として存在しており、その実質が個人企業とは言いがたい。しかし、被相続人はF建設から生活の糧を得ており、自己の資産の殆どをF建設の事業資金の借入の担保に供し、被相続人から恒常的にF建設に資金援助がなされ、またF建設の資金が被相続人に流用されたりしている。これらの事情に照らせば、F建設は被相続人の個人企業に近い面もあり、またその経営基盤の主要な部分を被相続人の個人資産に負っていたものであって、被相続人がその個人資産を失えばF建設の経営は危機に陥り、他方F建設が倒産すれば被相続人は生活の手段を失うばかりでなく、担保に供している個人資産も失うという関係にあり、F建設と被相続人は経済的に極めて密着した関係にあったものである。そうすると、F建設の経営状態、被相続人の資産状況、援助と態様等からみて、F建設への援助と被相続人の資産の確保との間に明確な関連性がある場合には、被相続人に対する寄与と認める余地がある。」と述べたうえで、F建設の経営状態と被相続人の資産状況等について詳細に検討した結果、Aの寄与分を相続財産の20%と定めました。