(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hは、銀行から2600万円を借り入れて(本件債務)、収益物件としてマンションを建築しました。
その後、Hは長男Aとの間で、Aが本件債務(残元金2400万円)について免責的債務引受をすることを条件に、マンションとその敷地(本件不動産)を贈与する契約を締結しました(本件贈与)。
贈与当時の本件不動産の評価額は4000万円でした。
Aは本件不動産から得られる賃料収入を原資として、利息を含めて総額4100万円を支払って本件債務を完済しました。
Hが亡くなり、Hの法定相続人はAと二男Bでした。
Hの相続開始時の本件不動産の評価額は3000万円でした。
裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:令和5年12月7日
長男Aは、銀行への支払額は利息を含めて総額4100万円であるのに対し、本件不動産の相続開始時の価額は3000万円であるから、贈与の価値はマイナスであり、自分には特別受益がないと主張しました。
二男Bは、本件贈与は形式的には負担付贈与だが、本件不動産の賃料収入で本件債務を完済したうえに、相続開始時に評価額3000万円の本件不動産が残っているのであるから、実質的には単純な贈与であり、3000万円を持ち戻すべきだと主張しました。
本件の争点は、ⅰ)本件贈与は負担付贈与か単純贈与か、ⅱ)負担付贈与の場合における贈与の価額をどのように算定するか、の2点です。
東京高裁は、
争点ⅰ)については、本件贈与は負担付贈与であると判断しました。
争点ⅱ)については、
贈与時における贈与の目的物の価額から引受債務の残元金を控除した部分を「特別受益部分」としたうえで、相続開始時における贈与の目的物の価額に当該特別受益部分の割合を乗じた額が「贈与の価額」であるとしました。
したがって、本件においては、贈与時における贈与の目的物の価額は4000万円であり、Aが引き受けた本件債務の残債務の元本は2400万円であるので、4000万円から2400万円を控除した1600万円に相当する部分(全体の40%(1600万円÷4000万円))が特別受益に該当し、本件不動産の相続開始時の価額は3000万円なので、相続開始時の特別受益の額は1200万円(3000万円×0.4)との結論を導きました。