(事案を簡略化して説明します。)
被相続人H名義の建物(本件建物)にHの子Aが無権限で居住していました。
Hが亡くなり、Hの法定相続人はHの子A,子B,子Cの3人でした(法定相続分はそれぞれ3分の1)。
BとCはAに対して、本件建物の明渡しを求めて提訴しました。
原審(東京高裁)は、BとCの請求を認めて、Aに対して明渡しを命じました。
これに対して、Aが上告しました。
裁判所:最高裁判所第一小法廷
裁判年月日:昭和41年5月19日
BとCの共有持分権を合わせると3分の2となり過半数です。他方、Aの共有持分権は3分の1です。
相続財産について過半数の共有持分を有する共同相続人は、相続財産を占有する少数持分の共同相続人に対して相続財産の明渡しを請求できるかが本件の争点です。
最高裁は「他のすべての相続人らがその共有持分を合計すると、その価値が共有物の過半数をこえるからといって、共有物を現に占有する前記少数持分権者に対し、当然にその明渡を請求することができるものではない。」と述べて、BとCの請求を棄却しました。