【判例解説】遺言を撤回する遺言をさらに別の遺言で撤回した事例

【判例解説】遺言を撤回する遺言をさらに別の遺言で撤回した事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

遺言者Hは、平成3年11月15日に死亡しました。Hの法定相続人は、妻A、子B、子Cの3名でした。

Hは、昭和62年12月6日、自筆証書遺言によって、その遺産の大半をBに相続させる旨の遺言をしました(甲遺言)。

Hは、平成2年3月4日、自筆証書遺言によって、Bに相続させる遺産を減らし、甲遺言の内容より多くの遺産をB以外の者に相続させる内容の遺言をしました(乙遺言)。
乙遺言の末尾には、「この遺言書以前に作成した遺言書はその全部を取り消します。」との記載がありました。

さらに、Hは、平成2年11月18日、自筆証書遺言によって、「Dに渡した遺言状は全て無効とし、E弁護士のもとで作成したものを有効とする。」と記載された遺言をしました(丙遺言)。
丙遺言にいう、「Dに渡した遺言状」とは乙遺言を差し、「E弁護士のもとで作成したもの」とは甲遺言を指しています。

Cは、乙遺言により甲遺言が失効したとして、甲遺言の無効確認を求めました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高最大一小法廷
裁判年月日:平成9年11月13日

本件の争点

遺言を撤回する遺言を、さらに別の遺言で撤回した場合、当初の遺言の効力が復活するか、が本件の争点です。

〇結論

最高裁は「遺言(以下『原遺言』という。)を遺言の方式に従って撤回した遺言者が、更に右撤回遺言を遺言の方式に従って撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解される。これを本件について見ると、前記一の事実関係によれば、亡Hは、乙遺言をもって甲遺言を撤回し、更に丙遺言をもって乙遺言を撤回したものであり、丙遺言書の記載によれば、亡Hが原遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことがあきらかであるから、本件においては、甲遺言をもって有効な遺言と認めるのが相当である。」と判示して、当初の遺言(甲遺言)の効力を認めました。

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