【判例解説】遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に対してすべき価額弁償の額

【判例解説】遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に対してすべき価額弁償の額

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hの法定相続人はAとBでした(いずれもHの子)。

Hは唯一の資産である本件土地をAに遺贈する旨の遺言(本件遺言)を遺して昭和60年に死亡しました。

H死亡後、Aは本件遺言に基づき本件土地の所有権移転登記を経て、平成2年に本件土地を不動産業者であるD社に対して売却代金2億9000万円で売却しました。

BはAに対して遺留分減殺請求を行い、提訴しました。

なお、本件土地の周辺の地価は、相続開始後上昇し、Aが売却した頃がピークであり、その後下落していきました(本件の口頭弁論は、平成7年5月15日に終結しました)。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第三小法廷
裁判年月日:平成10年3月10日

本件の争点

遺留分減殺請求を受けるよりも前に遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に対してすべき価額弁償の額の算定基準が本件の争点です。

結論

最高裁は「遺留分権利者が減殺請求権を行使するよりも前に減殺を受けるべき受遺者が遺贈の目的を他人に譲り渡した場合には、民法1040条1項の類推適用により、譲渡の当時譲受人が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときを除き、遺留分権利者は受遺者に対してその価額の弁償を請求し得るにとどまるものと解すべきである(最高裁昭和53年(オ)第190号同57年3月4日第一小法廷判決・民集36巻3号241頁参照)。そして、右の弁償すべき額の算定においては、遺留分権利者が減殺請求権の行使により当該遺贈の目的につき取得すべきであった権利の処分額が客観的に相当と認められるものであった場合には、その額を基準とすべきものと解するのが相当である。」と述べて、本件においては実際の売買代金額を基準にすべきと結論しました。

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