「裁判は時間がかかる」とよく言われますが、どうして裁判は時間がかかるのでしょうか。民事裁判を念頭に置いて説明します。
まず、裁判を起こそうと思えば、通常、弁護士に依頼をして「訴状」を作成して裁判所に提出します。
この「訴状」というのは、「何を訴えるのか」という一番重要な書面です。
訴状を作成するためには、弁護士は依頼者の話をしっかり聞いて依頼者が何を訴えたいのか把握しなければなりません。
そのためには、打合せを重ねつつ、「家の中にこういう書類はないですか」と尋ねたりしながら証拠を準備します。証拠の準備ができたら訴える内容を文章にしてまとめます。
事案の複雑さにもよりますが、訴状を準備するまでに1~2か月かかります。複雑な案件の場合はさらに時間がかかる場合もあります。
訴状が完成すると、訴状を裁判所に提出します。訴状を提出してもすぐに裁判は始まらず、訴状提出から1か月半後くらいに、ようやく「第1回口頭弁論期日」が開かれます。
「第1回口頭弁論期日」で裁判が始まります。裁判が始まると、被告(訴えられた側)が答弁書を提出することになります。
答弁書とは、訴状の記載内容について認否を行う書面のことです。具体的には、訴状に記載されている内容の一つひとつについて、「認める」、「否認する」、「不知」と答えていきます。
例えば、妻(原告)が夫の不倫相手の女性(被告)を訴えて慰謝料を請求する裁判の場合、訴状に、「被告は原告の夫の会社の同僚であり、同じ職場に勤めている」と書かれていたとします。
その記載に間違いがなければ「認める」と書きます。
事実と違う場合は「否認する」と書きます。
否認する場合には、「原告の夫なんて知らない。会ったこともない。」とか、「会社の同僚であるが、職場は別である。」などと追加して書きます。「否認する」というだけでは、どこが違うのか分からないからです。
こういうことを一つずつ書いていくのが答弁書です。
答弁書が出てくるまでに通常1か月程度かかります。
被告から答弁書が出ると、原告はそれに対して書面で反論します。
例えば、答弁書の内容が「同僚だが交際はしていない」という内容であった場合、「そんなはずはない。スマートフォンの着信履歴がある」などと反論をします。
それに対して、被告は「確かに電話はしたけど仕事の話だ」などと反論したりします。
こういうやりとりを基本的に全て書面で行います。
弁護士が書面を作成するのに、だいたい1か月程度かかるので、1か月に1回書面が出て、その1か月後に反対側から書面が出て、ということが繰り返されます。
どうして、1回の書面を作成するのに1か月もかかるのかというと、一つには、弁護士はその1件だけを扱っているのではなく数十件の案件を抱えているので、多くの書面を書かなければならず、そのために時間がかかるということがあります。
また、書面を作成するにあたっては依頼者と打合せをする必要がありますが、当然、依頼者と弁護士の双方が空いている日時で調整することになるので、すぐに打合せが入らないことも結構あります。
そのようなことで書面の作成に時間がかかります。裁判は書面のやりとりで時間がかかるのです。