こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士木野達夫です。
寄与分とは、共同相続人中に被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与」をした者(寄与者)がいる場合に相続人間の公平をはかるための制度です(民法904条の2)。
具体的には、相続財産から寄与者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、算定された相続分に寄与分を加えた額が寄与者の相続分となります。 結果的に、寄与者は他の相続人より多く相続財産を取得することができます。
それでは、遺言書がある場合、寄与分はどのように扱われるのでしょうか。
民法では「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできない。」と規定されています(民法904条の2第3項)。
どういうことかといいますと、例えば、被相続人の遺産として「不動産甲(時価5000万円)、不動産乙(時価3000万円)、預金(2000万円)、その他(時価50万円)」があったとします(遺産総額1億50万円)。
相続人は、長男、二男、三男の3人とします。
被相続人は遺言書を残しており、遺言書には「長男には不動産甲を相続させる。二男には不動産乙を相続させる。三男には預金を相続させる。」と記載されていたとします。
この場合、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」は1億50万円で、「遺贈の価額」は1億円です。
つまり、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額」は50万円です。
そして、「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできない」ので、寄与分として主張できる額は最大50万円です。
仮に、三男が「自分は被相続人の遺産の増加に3000万円分寄与したので寄与分を主張したい」と言っても、三男が主張できる寄与分の最大額は50万円です。
これが、俗に「遺贈は寄与分に優先する」と呼ばれているものです。遺贈の「残り分」にしか寄与分を主張することはできないのです(また、主張したからといって必ず通るものでもありません。)。
更に言えば、上記の例で、遺言書の最後に「上記記載の財産以外の財産については長男に相続させる」との記載があれば、全ての遺産が「遺贈された」ことになり、寄与分として主張できる額は残りません(ゼロです)。
なぜ民法がこのような規定を設けたのかを私なりに考えてみたのですが、おそらく、次のような趣旨ではないかと思います。
すなわち、実際に三男が被相続人の財産の増加に寄与しており、被相続人が三男に感謝しているのであれば、被相続人は遺言書を作成するときに三男に多く遺産を遺すような書き方をするのではないでしょうか。
被相続人が、そのような書き方をしなかったということは、被相続人としては三男の貢献を評価していない(あるいは評価をしていたとしても別の理由により三男の取り分を少なくした)ということなのでしょう。
そうだとすると、そこに被相続人の評価や意思が表れているのであるから、被相続人の意思を尊重すべきということなのだと思います。
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宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫