ひょっこり飛び出し男

ひょっこり飛び出し男

2月4日,さいたま地裁で「ひょっこり飛び出し男」に対する判決が言い渡されました。

「ひょっこり飛び出し男」というのは,道路を自転車で走行中,突然,車の前に飛び出すという行為を繰り返していた男のことで,以前から報道でも取り上げられていました。

結局,その男は逮捕されて裁判にかけられたのですが,動機として,「人がびっくりするのを見るのが楽しかった」とか「いらだちを解消しようとした」などと述べたそうです。

判決は,そのような動機に酌量の余地はないとして,懲役2年執行猶予4年の判決を下しました。

今回は,この「ひょっこり飛び出す行為」がどの法律に違反するのかを考えてみたいと思います。

実は,報道内容を見る限り,「道路交通法違反などの罪で」としか書かれておらず正確なところは分かりません。

そこで,推測になりますが,検討してみたいと思います。

まず,報じられている「道路交通法違反」を見てみます。

道路交通法を探しても,そのものズバリ当てはまるものはありません。

条文に「車の前に飛び出してはいけない」とか「人を驚かせてはいけない」というのは見当たりません。

一応,おそらくこれだろうというのがあって,道路交通法17条4項に,車両は左側を走らないといけないと書いてあります(皆さんよくご存知のルールです)。

インターネットに上がっている動画をいくつか見てみると,男が自転車で車道の左側を走行していて,突然,反対車線へ飛び出す場面がありました。

このような行為であれば,反対車線,つまり道路の右側を走行していることになるので17条4項違反に問えると思います。

おそらく,この条項に違反するということだろうと思います。

しかし,ここで疑問が生じます。

判決は「懲役2年執行猶予4年」ですが,道路交通法17条4項違反の罰則は「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」となっています。

ですから,これだけでは懲役2年の判決を下すことはできません。

それで,あれこれ考えたのですが,一番可能性が高いのは刑法の「暴行罪」ではないかと思います。

暴行罪というのは,実はたいへん分かりにくい犯罪でして,例えば,人に向かって石を投げると,石が人にあたらなくても暴行罪が成立します。

古くに有名な判例があります。

狭い室内(4畳半)で日本刀を振り回して暴行罪になった例があります(昭和39年1月28日最高裁判決)。

少し変わったところでは,人のすぐ近くで太鼓や鉦を連打して暴行罪になった例もあります(手話29年8月20日最高裁判決)。

このように,直接人の体に触れなくても暴行罪が成立する場合があります。

今回の事案では,理論構成の詳細は不明ですが,おそらく暴行罪を適用したのだと思います。

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