今年の10月,東京弁護士会が弁護士法人「アディーレ法律事務所」を業務停止2か月の懲戒処分としたことがニュースになりました。
アディーレ法律事務所は,着手金返還キャンペーンを「1か月の期間限定」と謳いながら5年近く続けていました。
よくある「今だけ無料」という感じの広告ですね。これを長期間続けたわけです。
この件に関して,昨年2月に消費者庁が「景品表示法」に違反するとして,「広告を禁止しなさい」という「措置命令」を出していました。
景品表示法については,以前お伝えしましたが,そのときは「優良誤認表示」でした。
今回は,景品表示法5条2号の「有利誤認表示」です。
「有利誤認表示」とは,実際の取引よりも著しく有利であると誤認される表示です。
どうして「今だけ無料」などの表示を続けると違法なのでしょうか。
例えば,衣料品の販売などでバーゲンセールというのがありますね。バーゲンにはどうして行きたくなるのでしょう?
「お得感」があるからですよね。
バーゲンで「1万円」の札に赤線を引いて「セール期間中につき50%OFF」と書いてあれば,とても「お得感」がありますよね。
なぜなら,「1万円相当の商品を5000円で手に入れることができる」と思うからですよね。
もし,同じ商品がバーゲンになる前から5000円で売っていたとしたらどうでしょう?
そうであれば,そもそも,その商品は初めから「5000円」の商品だということです(5000円でも利益が出るということ)。
消費者は「元々5000円」の商品を喜んで得した気分になって5000円払って買うことになるわけです。
なんだか消費者を欺いているような気がしませんか?
このような行為は場合によっては刑法の詐欺罪に問われる可能性もある行為です。
景品表示法はこのような行為を「有利誤認表示」として禁止することによって,消費者を保護しているのです。
今回の法律事務所の行為は,「1か月間限定」として着手金返還キャンペーンを行い,キャンペーンを5年間近く延長していたとのことです。
ところで,「弁護士に依頼する」というと,どういうイメージがあるでしょうか?
弁護士費用って,なんとなく高額なイメージがあるのではないでしょうか。
弁護士が「期間限定で着手金が実質無料」というと,「本来高額な着手金が今なら特別に無料」という「お得な」印象を与えることになります。
しかし,5年間も実質無料でできたということは,そもそも着手金が実質無料でもきちんと利益が出るようになっていたと思われます。
そう考えると,先ほどのバーゲンの例と同じように,特別な「お得感」を出して消費者を誤解させたといえるのではないでしょうか。