タトゥー裁判

タトゥー裁判

医師免許を持たずにタトゥーを入れたということで,医師法違反の罪に問われた彫り師の刑事裁判が現在,進行中です。

今年4月に第1回公判が開かれて,彫り師の人は無罪を主張しました。

争点は,タトゥー(入れ墨)が「医業」に該当するか否かです。

医師法第17条には「医師でなければ,医業をなしてはならない。」と規定されています。

検察側は感染症の危険性などを理由に「医師が行わなければ保健衛生上の危害が生じる」と主張しています。

弁護側は「医業とは健康を確保することであり,タトゥーを彫ることは医業ではない」,「医師免許がなければ彫り師になれないというのでは,憲法が保障している職業選択の自由の侵害に当たる」等と主張しています。

さて,法律にはどう書いてあるのでしょうか。

実は,医師法には「医業」とは何かについて明確に規定していません。

そのため,「医業とは何か」がこれまでにも何回か問題になりました。

たとえば,かつて「看護師が注射をしてもよいか」とか,「ホームヘルパーが痰の吸引をしてもよいか」などが議論されました。

これらも注射や痰の吸引が「医業」かどうかという問題です。

このような問題が生じた場合,たいてい「通達」というものが出されて一応の決着を見ます。

タトゥーに関して参考になる通達は,「アートメイク」に関して平成13年に厚生労働省が出した通達です。

この通達によると「アートメイクは医師以外が行ってはいけない。」という見解が示されています。

そして,厚労省は「この通知はタトゥーも含む」との見解を取っています。

つまり「タトゥーも医師以外は行ってはいけない。」というのが,一応国の見解ということになります。

こういうと,「国の見解」が「ダメ」だというのなら「ダメ」なのではないか?という素朴な疑問が生じるかも知れません。

ここで,「通達」とは何か「国の見解」とは何かについて少し勉強しましょう。

ちょっと難しい話ですが,「通達」は行政機関が出すもので行政機関内部における指針です。

したがって,国民の権利・義務を直接に規定するものではありません。

三権分立というのを学校で学びましたね。

「法律」を作るのは国民の選挙によって選ばれた国会議員が集まった国会です。

法律は民主的に選ばれた国会議員が作るので,国民の権利を直接制限します。

つまり,国民は法律に拘束されます。

しかし,「通達」は行政機関が出すものなので国民はそれに拘束されません。

このように,実は,本来国民が拘束を受けないはずの「通達」によって「国の見解」というものができているのです。

ですから,今回の件も一応検察は平成13年の通達を根拠に起訴しているのですが「タトゥーは医師以外が行ってはいけない。」という「通達」に基づく「国の見解」は直接国民を拘束する効力を持っていないのです。

したがって,この裁判の結果がどうなるかは何ともいえません。

裁判所は,「通達」に縛られることなく裁判所自身の考えで判断します。

裁判の結果がどうなるかは非常に興味深いです。

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