先日,大手不動産仲介業者の従業員が,有名な俳優と女優の夫婦が自分が勤務する店舗に賃貸物件を探しに来たことをツイッターに投稿したということが話題になりました。
法律上,どのような問題があるでしょうか。
まずは,宅地建物取引業法(いわゆる「宅建業法」)違反が問題になります。
大手不動産仲介業者は当然,宅建業法に規定された「宅建業者」に該当します。
宅建業法45条には,宅建業者は「正当な理由がある場合でなければ,その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。」と規定されています。
今回の件は「正当な理由」などあるはずはないですから,この規定に違反するでしょう。
この規定に違反した場合,宅建業者は場合によっては業務停止処分などもあり得ます(宅建業法65条2項2号)。
また,正当な理由なく秘密を漏らした従業員には刑事罰が規定されており(宅建業法83条1項3号),場合によっては50万円以下の罰金に処せられます。(ただし親告罪。83条2項。)
次に民事上の損害賠償責任が問題となります。
被害者である有名人夫婦が,秘密を漏らした従業員にプライバシーの侵害として損害賠償を請求することが可能だと思われます(民法709条)。
損害賠償の内容としては,この件で特にお二人の社会的評価が落ちるとは言いがたいので不愉快な思いをした慰謝料ということになろうかと思います。(請求しないとは思いますが・・・)
この場合,お二人は不動産仲介会社に対しても使用者責任(民法715条)を追及できます。
また,仮に,夫婦からの損害賠償責任の追及がない場合であっても,今回の件でずいぶん会社の信用は低下したのではないでしょうか。
会社としては従業員に対して,会社の信用を低下させたことを理由に損害賠償を請求することが可能だと思われます(もっとも会社が損害額を立証することは容易ではありませんが・・・)。