今回は、たまには刑事事件について書いてみようと思います。
実生活上では、普通、刑事事件には関わりはないと思いますが、マスコミなどでは民事事件よりも刑事事件のほうが大きく取り上げられてますので関心のある方も多いかと思います。
今回は、刑事事件のニュースでよく出てくる「保釈」の話です。
ときどき誤解されている方がおられますが、「保釈」は無罪放免ではありません。
「お金持ちはお金を払えば許されるのか」とお怒りになる方がおられますが、そうではありません。
「保釈」というのは、一時的に「勾留」が解かれるだけです。
「勾留」というのは、一定の犯罪の容疑があり、証拠隠滅のおそれがあるなどの一定の要件がある場合に、裁判官の命令で行われる身体拘束です(逮捕と勾留の違いは省略します)。あくまで裁判が終わるまでの一時的なものです。
裁判が確定して懲役刑(で執行猶予がつかない場合、いわゆる「実刑」)となると、「刑務所」に入りますが、「勾留」は「刑務所」には入りません。「拘置所」に入ります。
ご存じのとおり、刑事被告人には「無罪推定」の原則があります。
有罪判決が確定するまでは無罪と推定されている状態です。ですから、無罪の人を刑務所に収容できないのは当然のことです。
では、なぜ、「拘置所」に収容してもいいのか?
それは、裁判を適切かつスムーズに行うためです。被告人が逃亡すれば裁判がスムーズに行きませんよね。被告人が証拠を捏造したりすれば裁判が適切にできませんよね。
だから、そのようなおそれがある場合には、「悪いけど裁判が終わるまで拘置所にいて下さい」ということです。
それで、「保釈」というのは、被告人に一定のお金を出させて、「ルールを破ればお金を取り上げますよ」と警告をして被告人を拘置所から外に出すことです。
被告人はお金を取り上げられたくないので、逃亡したり証拠を捏造したりすることはやめようと考えるのです(そう考えない人がたまにいるのですが・・・)。
ですから、「お金を取り上げますよ」という警告が意味のないものでは困ります。大金持ちに200万円程度出させても、何とも思わないかもしれません。
だから、その人の資産状況も1つの参考にして金額を決めます。
世間を賑わすような人(政治家とか経済界の大物とか)の場合、保釈金額が大きいのはそのためです。「さすがにこれだけの金額なら取り上げられるのは辛いだろう」という金額を設定するのです。
そういうことですので、「金持ちは大金を積めば外に出られるというのはけしからん」というのは誤解です。
金持ちでなければ大金を積まなくても外に出られるのです(もちろん、取り上げられたくないと感じるようなそれなりの金額にはなりますが)。
もっとも、「保釈」という制度は、お金を積めば必ず出られるわけではないことに注意が必要です。
保釈が認められるためには法律で決められた細かな要件を満たす必要があります。要件は結構複雑ですのでここでは省略します。
このように、「保釈」とは「妙なことをすればお金を取り上げるぞ」と警告して、裁判が終わるまで一時的に被告人を外に出す制度なのです。
もし、近くに誤解している方がおられたら教えてあげて下さい。