3月4日,同性カップルの不貞慰謝料の支払を命じる判決が東京高等裁判所で言い渡されました。
事案は,女性同士のカップルのうちの1人(被告女性)と第三者(生物学的に男性・被告男性)が不貞行為を行ったとして,カップルのもう1人の女性(原告女性)が被告女性と被告男性に対して慰謝料の支払を求めて提訴したという事案です。
元々,不貞行為というのは,「男女間の夫婦」のうちの1人が第三者と肉体関係を結ぶことを意味していました。
その後,男女の内縁関係も「婚姻に準ずる関係」(最高裁昭和33年4月11日)といわれるようになり,不貞行為の慰謝料が認められるようになりました。
しかし,これまで,同性カップルの不貞慰謝料を認めた裁判例はなく,本件の第一審判決(宇都宮地裁真岡支部令和元年9月18日)が初めてだと思います。
そして,3月4日に東京高裁で一審判決を支持する判決が出たのです。
もっとも,同性カップルであれば必ず不貞慰謝料が認められるわけではありません。
本件判決では,このカップルが「男女の婚姻関係に準ずる関係」にあったといえると認定しています。
具体的には,このカップルは7年間同棲しており,同性婚が認められているアメリカのニューヨーク州で婚姻手続きを行っており,日本で結婚式も挙げています。
また,このカップルは「2人で子育てをしたい」と考えて,被告女性が第三者(実は被告男性)から精子の提供を受けて人工授精まで行っています。
裁判所は,このような「男女の婚姻関係に準ずる関係」が実際に築かれていたことを重視したのです。
また,同時に,裁判所は,世界的に見て同性婚を認めている国や地域が25を越えていることや,日本国内でも同姓のパートナーシップ制度を採用する自治体が現れてきている点も指摘しています。
このように,裁判所は世界や日本での価値観の変化も考慮したうえで,同性カップルの不貞行為について慰謝料を認める判断を行ったのです。