家族信託は、生前贈与、成年後見制度、遺言などとは違って柔軟な財産管理を行うことが可能ですが、注意点がいくつかあります。
まず、家族信託を組成するだけで直ちに節税の効果があるわけではありません。贈与税がかかることを回避したり、認知症発症後も相続税対策が可能であるという点では間接的に節税効果はあるかも知れません。
節税のために家族信託を組成するのであれば、税理士を含めた緻密な検討が必要になります。
税務関係についていえば、複数の収益物件のうち1つを信託財産として信託を組成した場合、信託財産と信託財産以外の財産との間で損益通算ができないということも注意が必要です。
また、二次相続、三次相続までも含めて組成を行う場合、何世代にもわたって拘束されることになります。これは家族信託のメリットの1つですが、ご家族の納得を得ていない場合には、かえってトラブルになる可能性も孕んでいるといえます。
その他、家族信託に理解のある金融機関が少ないのが現状です。金銭を信託財産とする場合、本来であれば、「委託者A受託者B信託口」などの口座名義で保管することが好ましいのですが、このような口座の開設をしてくれる金融機関は現時点においてはごくわずかです。
そのため、金銭を信託財産とする場合には弁護士などの専門家と十分に相談する必要があります。