現在、安倍晋三元首相が銃撃された事件で裁判が行われているところですが、山上徹也被告人の被告人質問が複数回にわたって行われました。
複数回行われた被告人質問において、弁護人の質問は、被告人の生い立ちや家庭環境についての質問が多く、最後には山上被告人の口からご遺族の方たちへ謝罪が述べられました。やはり、情状酌量を訴えるということだと思います。
これに対して、検察官の質問は多岐にわたりましたが、注目すべき点は、手製銃の製造方法や試し打ちなどについての質問に多くの時間を割いたことです。
検察官が手製銃について質問を掘り下げたのには理由があります。
今回の裁判では、銃刀法違反の「発射罪」の成否が1つの大きな争点となっています。「発射罪」が成立すると、単独でも無期懲役か3年以上の有期懲役が科される犯罪ですので、全体の量刑にも大きく影響すると思われます。
銃刀法の「発射罪」の規定は、安倍元首相銃撃事件を受けて改正されていますが、刑事裁判では、事件当時の法律が適用されることになります。
事件当時の銃刀法では、「発射罪」が適用されるのは、「拳銃」「小銃」「機関銃」「砲」の4つでした。
実は事件当時においては「拳銃」の定義はあまり明確ではなく、一般的には「片手で操作できる小型の銃」と言われていました。
この定義によると、山上被告人が製造して発射した手製の銃はかなり大きくて片手で操作できるとは言い難いので、「拳銃」には該当しない可能性が高くなります。
そこで、検察官は「砲」に該当すると主張しているようです。この「砲」についても明確な定義がないため、「発射罪」が成立するかどうかが微妙な状況です。
検察官としては、発射罪についても成立させて重い量刑に持っていきたいと考えています。
そのため、被告人質問より前に行われた科学捜査研究所の研究員の証人尋問でも、研究員は「人や動物を殺傷する能力がある」と証言していますし、被告人質問でも、銃の作り方や試し打ちの様子などを詳しく質問したのです。
検察官としては、手製銃の殺傷能力を強くアピールして「発射罪」の成立を認めてもらおうという狙いのようです。
いろんな意味で世の中から注目されている裁判ですが、法律家の1人としては「発射罪」の成否についてどのような判断が下されるかについても大きな関心を持っております。