最近,未成年者(当時15歳)へのタバコを販売した店員に高松高裁が逆転無罪判決を下したというニュースがありました。
多くのコンビニでタッチパネルで「20歳以上」のボタンを押すことによって自己申告をさせています。
今回の事件も,未成年者がパネルを押して購入しています。
一審では,有罪判決でした(罰金10万円)。
未成年者へのタバコの販売は「未成年者喫煙禁止法」で禁止されています。
年齢確認は平成13年の改正によって義務づけられました。
一審判決と控訴審判決ではどのような違いがあるのでしょうか。
法律的には,「故意」が問題となります。
未成年者喫煙禁止法では,「未成年者」に「タバコ」を売る行為を禁止しています。
この犯罪が成立するためには,自分が売る相手が「未成年者であること」と自分が売るものが「タバコ」であることを知っている必要があります。
「タバコ」については問題ないでしょう。問題は「未成年者」であることを知っていたか,です。
一審判決は,「少年は頬にニキビがあるあどけない顔で,一見して未成年とわかる顔立ちだった」と言っています。
これに対し,控訴審は,「少年が1m67cmという身長や服装,そして,店員が少年を見た時間が短時間であったことなどから,店員が未成年者だとわかったと断定することはできないと言っています。
非常に難しい問題です。
判決文を読んでいないので,詳しいことはわかりませんが,大人びた未成年もいるし,「あどけない顔立ち」の大人もいますから,「あどけない顔立ち」だけで20歳以上だとわかるかというと難しいのではないでしょうか。
ところで,未成年者喫煙禁止法はタバコを吸った未成年者もタバコを買った未成年者も罰則がありません。
法律は未成年者を守ることが目的であるからと説明されています。
しかし,騙して買った方はお咎め無しで,騙されて売った方が処罰されるということに疑問の声も出ているようです。
理屈だけを言えば店員を騙してタバコを手に入れたということで詐欺罪(刑法246条)に該当するのでしょうけれど,やはり,未成年者喫煙禁止法の目的・趣旨からすれば,この場合に詐欺罪を適用することはないでしょうね。