こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。
今回は、「法律」と「法令」の違いについて説明したいと思います。
まず、法律から説明します。
これは皆さんよくご存知だと思います。国会が定めたルールです。
学校で三権分立について学びましたよね。立法機関である国会、行政機関である内閣、司法機関である裁判所の3つです。
このうち、立法機関である国会が定めるルールが法律です。
では、法令というのは何でしょうか。
実は法令については厳密な定義はありません。
一般的には、「国の立法機関である国会が制定する法律と国の行政機関が制定する命令の総称」を指すといわれています。
つまり、国会が定める法律だけではなく、行政機関が定める命令も含まれるのです。
では、「行政機関が定める命令」とはどういうものでしょうか。
国会は法律を制定するのですが、何から何まで細かい部分を全て国会で決めるのは現実的にはほぼ不可能です。
そのため、植物で例えると、法律では太い幹とやや太めの枝あたりまで決めておいて、細い枝や葉っぱの部分は各省に策定してもらうことになります。
各省にはその分野に精通した優秀な官僚がいますので、細かい部分を緻密に作り上げていきます。これが「行政機関が制定する命令」です。
ここで、大事なことがあります。先ほど三権分立の話をしましたが、本来、内閣(行政機関)は国会(立法機関)が定めたルールに従って国を運営する機関です。
しかも、国会は国民が直接選挙で選んだ国会議員によって構成されているのと異なり、内閣は直接の民主的基盤を持ちません。
したがって、国会が定めた法律の趣旨に反しない範囲で命令を作らないといけません。
一例を挙げますと、建築基準法という法律があります。この法律は、国民の安全を守るために建築物の基準を定めている法律です。
例えば、建築基準法では、「ある一定の地域で建物を建てる場合には『防火設備』が必要です」という旨が規定されています。そして、「どのような防火設備」を設置するべきかについては「政令」で定めることになっています。
「政令」というのは内閣が策定する命令のことです。具体的には、この場合、「建築基準法施行令」のことになります。
今の例では「政令」でしたが、各省の大臣が制定する命令を「省令」といい、内閣総理大臣が制定する命令を「内閣府令」といいます。
このように、実際には、法律だけでは世の中が機能しないので、内閣や大臣等の行政機関が命令を制定することで世の中が動いています。そして、「法律」と「命令」を合わせたものを「法令」といいます。
ただし、先ほど述べたように、「法令」には厳密な定義はなく、「法律」と「命令」の他に地方自治体が制定する「条例」と「規則」も含めて「法令」という場合もあるようです。
(なお「通達」についてはコラム「タトゥー裁判」を参照)
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宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫