生活費の援助は特別受益になるか

生活費の援助は特別受益になるか

こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士の木野達夫です。

最近、二世帯住宅が増えてきています。二世帯住宅では家計を完全に分けているところもあれば、二世帯で一緒にしているところもあります。

二世帯住宅に限らないことですが、親が子どもや孫に対して食事に連れて行き食事代を出してあげるとか、親子で(あるいは親、子、孫の三代で)旅行に行き、親が旅行代金を出してあげるとか、親が孫の教育費を出してあげるとかいうことがよくあります。二世帯住宅などで同居の場合には、特にこのような傾向が強いといえます。

このような生活費の援助は特別受益になるのでしょうか。

これは大変難しい問題です。特別受益とは被相続人の生前に「遺産の前渡し」といえるような財産の移転があった場合に、相続人間の公平を図るための制度です。

親と子が二世帯住宅などで同居している場合に、親が子に対して感謝の気持ちも含めて多少生活費を援助することはごく自然なことであり、「遺産の前渡し」というつもりでお金を支払っているかというと違うような気がします。
「遺産の前渡し」ということであれば、「あなたには先に遺産を渡したのだからあとで調整してね」(つまり、遺産分けの時は他の兄弟より少なくもらってね)という考えが親の頭の中になければなりません。私は、通常、親にはそのような考えはないと思うのです。

しかし、あまりにも金額が大きい場合には、「相続人間の公平」という観点から特別受益に該当するとの判断もあり得るかと思います。

裁判例としては東京家裁平成21年1月30日審判(家庭裁判所月報62巻9号62頁)があります。
同裁判例では、持ち戻すべき金銭給付か否かの基準を月額10万円とし、これを超えるものは全額持戻しの対象としました。抗告審である東京高裁平成21年4月28日決定(家庭裁判所月報62巻9号75頁)も東京家裁の審判を支持しました。

もっとも、親と子の経済的事情や子の健康状態(例えば病弱で働くことが困難)等によっても判断は変わってきますし、裁判官によっても見解は異なります。
したがって、家庭裁判所が一律に月額10万円を基準に判断するというものではなく、その点は注意が必要です。

**最後までお読みいただき、ありがとうございます。**
宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫

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