今年2月,法制審議会が相続登記の義務化を盛り込んだ法律改正の要綱を法務大臣に答申した,というニュースがありました。
土地や建物などの不動産については登記簿で管理されています。
登記簿が整備されていることで,不動産を購入する際に所有者が誰であるかを確認して安心して購入することができるのです。
その登記簿に登記名義人として記載されている人が死亡した場合,本来であれば,相続人の間で話し合って,誰がその不動産を承継取得するのかを決めます。そして,承継する人が決まればその人の名前で相続登記を行います。
しかし,現在の法律では相続登記は義務ではないため,実際には,相続登記の費用を節約するためや,話し合いがまとまらない等の理由で,元の名義人のまま長期間放置されることがあります。
相続登記がされずに長期間放置されると,相続人が何十人にも細分化していきます。
また,相続人が引越などで住所が変わっても,登記簿上の住所の変更手続きをしていないと相続人の住所を追いかけるのも困難になります。
このように,相続登記がされないまま長期間放置すると,所有者が誰か分からない,生死も不明という状況が生じます。
このような所有者不明の土地は全国に約2割あるといわれています。
不動産の所有者が不明だと困ることがいろいろあります。
例えば,国や自治体がある土地を収用して道路として利用したいとき,その土地の所有者と交渉する必要があるのですが,誰と交渉していいか分からないため,いつまで経っても土地を利用できないということになります。
また,倒壊の危険のある空き家が放置されたり,荒れ地が放置されて景観が悪化したりします。
そのような事態を避けるために,今回の法制審議会の答申では,不動産を相続したことを知ってから3年以内に相続登記をしなければいけないと義務化するべきだと述べています。そして,違反した場合には過料という制裁(10万円以下)を課すべきとしています。
また,住所や氏名を変更した場合には2年以内の申請を義務づけるべきであるとしています(違反すれば5万円以下の過料)。