「経歴詐称」ということがよく話題になります。
今回は経歴詐称が犯罪になるかについて考えてみましょう。
経歴詐称というと「詐欺罪」が頭に浮かぶかもしれません。
「詐称」の「詐」の字は詐欺の「詐」ですからね。
「詐欺罪」というと、どういうイメージでしょうか。
「嘘をつく」「騙す」というイメージですね。
実は、嘘をついただけでは詐欺罪にはなりません。
嘘をついて財産的な利益を得た場合に詐欺罪になります。
たとえば、全く根拠がないのに「がんが治る薬だ」と言って薬を売ると、嘘をついて金銭を得ているので詐欺罪です。
それでは、経歴詐称が詐欺罪になるか考えてみましょう。
経歴を偽って、テレビに出演する契約をして金銭を得ているから詐欺罪になりそうにも思えます。
しかし、話はそう簡単ではありません。
詐欺罪が成立するためには、嘘と結果との間に因果関係が必要です。
つまり、金銭を渡した人が「嘘を信じたから金銭を渡した」という関係が必要なのです。
経歴詐称でいいますと、経歴を信じたから契約したという関係が必要です。
そして、契約するに至った主要な理由がその嘘であることが必要です。
ですから、たとえば、テレビ局がその人の経歴を信じて、それが主要な理由で契約したわけではなく、その人が各方面で活躍していることやその人の才能や魅力に注目して契約した、というのであれば、詐欺罪は成立しません。
このように「経歴詐称」といっても、それだけでは詐欺罪かどうかは判断できないのです。
経歴を信じたことにより騙されて金銭などの財産的な利益を与えたと判断されれば、経歴詐称でも詐欺罪が成立することはあり得るでしょう。