製造物責任というのをご存じでしょうか?
製造物責任は「製造物責任法」という法律で規定されているものですが,この法律は通常の法律と異なる特徴的な部分が幾つかあります。
従来の法体系では,購入した商品に欠陥があって,そのために怪我をしたような場合,民法の不法行為責任(民法709条)や契約責任(債務不履行責任,民法415条)を追及する必要がありました。
しかし,これらはいずれも消費者が製品の欠陥により生じた被害を追及するには不十分でした。
例えば,不法行為責任の場合,メーカーに「過失」があったことを立証しなければなりません。「過失」というのは,簡単にいうと,メーカーとして通常要求される注意を怠ったことです。
ですから,仮に商品に問題があったとしても,メーカーとして通常の注意を払っていたが予測できなかったような場合には責任を追及できないということになります。
また,契約責任の場合,消費者は契約した相手にしか責任を追及できません。つまり消費者は販売業者に責任を追及することになります。
契約責任の場合も先ほど述べた「過失」と同様のもの(帰責事由)が必要となるのですが,販売業者の過失を証明するのはメーカー以上に困難です。
なぜなら,販売業者は自分で設計したり製造しているわけではないので,製品の不具合などを見抜くことは困難だからです。
このように従来の法体系では消費者被害の手当として不十分な点がありました。
そこで,制定されたのが「製造物責任法」です。
この法律では,製品に「欠陥」があった場合,その「欠陥」によって怪我をした場合などにメーカーに対して損害賠償を求めることができることになっています。
つまり,製造物責任の特徴の一つは,「欠陥」の存在を証明すれば「過失」の存在を証明する必要がないことです。
「欠陥」と「過失」はどう違うのかというと,少し分かりにくいのですが,欠陥とは「製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」とされています(製造物責任法2条2項)。
先ほど述べたように,「過失」とは通常の注意を怠ったことですので,それを立証するためには,製造工程全体を確認して,どこで注意を怠ったのか(どの過程に間違いがあったのか)を突き止めなければなりません。
これに対して,「欠陥」の場合は,商品そのものを専門家などに調査してもらうことで,通常必要な強度が不足していることなどが判明することがあり,「過失」を立証するより容易です。
また,製造物責任法によると,製造業者だけではなく,輸入業者に対しても責任を追及することができます。
輸入品の場合に海外のメーカーに責任追及をしなければならないとなると,消費者の負担が大きいため,輸入業者に対しても責任追及ができることにしたのです。
この点も製造物責任法の特徴の一つです。