今回は,証人尋問その3です。
証人尋問では,禁止されている質問の仕方があります。
一つは誘導尋問です。誘導尋問というのは,「あなたが見たとき信号は青だったのですね」「はい」「その車は減速することなく交差点に進入したのですね」「はい」「もう一方の車は,衝突を避けようとしてハンドルを切ったのですね」「はい」というように,証人に答えさせたい内容を先に示す尋問手法です。
このような尋問を行ってしまうと,「証人の記憶をチェックする」という証人尋問の役割を果たすことができません。証人は質問者の誘導に乗っかっているだけだからです。
そのため,質問としては,「あなたはその時信号を見ましたか」「はい」「信号の色は覚えておりますか」「はい。青色でした」「その車はどのように走行していましたか」「特に減速することなく交差点に進入しました」「もう一方の車はどのように走行していましたか」「衝突を避けようとしてハンドルを切りました」というふうに聞かなければなりません。
ただし,誘導尋問が許される場合もあります。例えば,反対尋問の場合です。
反対尋問は,前回の「証人尋問その2」でお話ししたように,証言に対してさまざまな角度から揺さぶりをかけて信用性をチェックする機能を有しています。
そのため,反対尋問では,「あなたは車の動きをよくご覧になっていたとのことですが,そうだとすると,信号の色まで確認している余裕はなかったのではないですか」とか,「『ハンドルを切った』とおっしゃいましたが,車の動きを見てそう判断しただけであって,実際に運転手がハンドルを切る動作を見たわけではありませんね」などの誘導尋問が許されます。
このように証人尋問にはいろいろなルールが存在するのです。